1. HOME
  2. ブログ
  3. お知らせ
  4. 吉江忠男さんからのメッセージ

吉江忠男さんからのメッセージ

8月3日(水)の長野市芸術館(長野)
8月5日(金)のキングスウェルホール(山梨)
の公演が近づいてまいりました。

今日は出演者である吉江忠男先生の許可をいただき、この演奏会にかける想いを綴っていただいた文章を公開します!

こちらは先生の他のメッセージとともに当日のプログラムにも掲載予定です。多くの方にこの力強いメッセージが届きますように。

……………………………………………………..

ハンス ホッターに捧げるオマージュ 吉江 忠男

ある暑い夏の午後、高校1年生であった私は、誰もいない音楽室の古い戸棚から一枚のLPレコードを取り出し、そっと針を落とした。
その瞬間、私の体を強い電流が突き抜け、味わった事の無い衝撃を覚えた。
゙私の求めていた声がここに在る!゙歌の世界で私の人生を賭けようと決めた瞬間である。
偉大なバスバリトン歌手ハンス ホッターという名前を知ったのは、解説書を読んでからだ。
東京芸術大学声楽科を目指し、血のにじみ出るような努力を続けられたのは、私の指針となる憧れと希望を偉大な歌手の歌唱によって目覚めさせられたからだ。

長い学生時代からの夢であったドイツ留学を目指し、ドイツ政府大学交換留学生「DAAD」試験に挑戦した。

デトモルト音楽大学の留学の夢が叶った事は大きな自信に繋がった。

5年間に及ぶ大学の研修を終えると同時に、1975年ドイツの名門オペラ劇場、フランクフルト歌劇場と専属バリトン歌手として契約を果たした。

1976年シェーンベルクのオペラ、旧約聖書の題材に基づく「モーゼとアロン」が新演出で上演される事になった。
配役リスト表を見て私は、信じられない驚愕に言葉を失った。
私の人生をを決定づけ、私を歌手として導いてくれた一枚のレコードの主、ハンス ホッターが同じ舞台に立ち、一緒に歌えるではないか….奇跡だ !!!
20年の歳月が流れていた。

2019年94歳で歌人生を全うされた大歌手を忍び「白鳥の歌」をハンス ホッターのオマージュとして捧げたい。

コンサートに共演して頂ける阪田知樹さんは、2016年初めて聞いたモーツァルトのビアノ協奏曲だ。
その美しい清澄なタッチに導かれ、完璧なテクニックと透明感溢れる優美で完全無欠な演奏に私は、圧倒された。

丁度その時、私と佐藤しのぶさんは、20回に及ぶ全国ツアーのピアニストを探していた。
いったん承諾して頂けたツアー参加は、リスト国際ピアノコンクールで第1位と六つの特別賞を受賞したことで欧州で演奏する機会が増え、ひとまず立ち消えになった。

しかし私は、その時以来、ラブコールを送り続けた。

今日ここに恰も、私の孫とも言える28才の若き天才ピアニストとの共演が実現し、今は亡き佐藤しのぶさんも、天国で微笑んでいることでしょう。

世代を越えた二人の邂逅から紡ぎ出される新鮮で刺激的な音の融合の世界をお楽しみください。

記事一覧

ナーブル音楽企画

「地方にもっと良い音楽会を」をモットーに、クラシック音楽を中心に演奏会やワークショップを企画・運営し、都会に引けを取らない質の高い演奏会や都会でも体験できない演奏会を気軽に聴ける環境を目指しています。

関連記事